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裁判資料 : 法律構成について
投稿者 : manager 投稿日時: 2015-07-08 08:54:34 (853 ヒット)

九条俳句不掲載訴訟・法律構成について

【国家賠償法規定】
第1条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは,国又は地方公共団体が,これを賠償する責に任ずる。

【訴状の構成】
第1 はじめに(当事者・事案の概要・本訴訟の意義)
第2 事実経過
第3 公民館の在り方
第4 違法性(憲法21条,憲法26条,教育基本法16条,社会教育法12条,憲法23条,地方自治法244条2項・3項,公民館条例21条)
第5 損害
第6 掲載請求権
第7 その他事情 

【第3 公民館の在り方について】


1 公民館とは? → 民間施設ではなく,「社会教育施設」
→ 学習の場所として,積極的な機会提供をすることが予定
2 公民館の目的・事業 → 社会教育法22条に例示列挙
3 公民館だよりとは? 本件公民館だよりの住民解放状況など
4 公民館・公民館だよりの意味を前提に,本件違法性を検討すべき

【第4 違法性について】


1 憲法21条違反
① 市民は,公権力に表現行為を「公共の福祉」に反しない限り規制されない表現の自由がある
② 公権力によって解放された場所では,表現・集会等の自由が保障される(市民会館など)
③ 本件では,表現行為の内容に着目して従来認めていた掲載を拒否したものであり,「公共の福祉」による規制も必要最小限度の制約のみあり得るところ,本件では他人の権利を侵害する表現である等ではなく,必要最小限度の制約はあり得ない。


2 憲法26条・教育基本法16条・社会教育法12条違反
① 憲法26条1項は,国民個々が積極的に学ぶ権利をも保障
→ 公権力は,国民の自由な学習に介入することは許されないところ,学習発表につき合理的理由なく介入したことは教育を受ける権利を侵害する。
② 教育基本法16条1項は「教育は,不当な支配に服することなく・・・行われるべき」
→ 公民館及び公民館だよりを利用した,市民が句会を通じて社会教育の中で学習成果を発表することを合理的理由なく妨げたことは,不当な支配である
③ 社会教育法12条は「国及び地方公共団体は,社会教育関係団体に対し,いかなる方法によっても,不当な統制的支配を及ぼし,又はその事業に干渉を加えてはならない
→ 句会に与えられていた編集スペースに句会が選定した一句を内容を見て掲載しないことは不当な統制的支配であり,句会の事業に干渉を加えることになる


3 憲法23条違反
憲法23条は「学問の自由」を保障するところ,学問の自由には,学問研究結果を発表する自由も含まれる → 本件では発表を不当に規制


4 地方自治法244条2項・3項,条例21条違反
① 正当な理由がない限り,住民が公の施設を利用することを拒んではならない(2項)
→ 公民館事業である公民館だよりの従前利用実態あり
→ 公民館事業目的(社会教育法22条)との関係から
② 住民が公の施設を利用することについて,不当な差別的取り扱いをしてはならない(3項)
→ 他のサークルも含めて,そのまま作品を掲載しているが,本件のみ
内容を見て不掲載としたのは差別的取り扱い
→ 本件俳句以降,7月俳句・9月俳句は掲載できるとされていることから明らかに差別的取り扱い


5 正当化根拠があるか?
(1) 平成26年7月3日文書。
① 社会教育法23条1項2号の,公民館は特定の政党の利害に関する事業を行うことが禁止,
② さいたま市広告掲載基準4条「世論が大きく分かれているものの掲載をしない」


(2) 平成26年12月10日
① 上記(1)①を撤回 
② 公民館だよりは・・・公民館が責任を持って編集・発行している刊行物であり,公平中立の立場であるべきとの観点を新たな理由とした


(3) 条例9条
①公民館の目的に反するおそれ
②公の秩序又は善良な風俗を乱すおそれ
③施設等を損傷し,又は滅失するおそれ
④専ら営利を目的とした事業に公民館の名称を利用しようとするとき
⑤特定の政党の利害に関する事業を行い,又は選挙に関し特定の候補者を支持しようとするとき
⑥特定の宗教を支持し,又は特定の教派,宗派,教団を支持するとき
⑦そのほか,管理上支障があるとき,又は委員会が適当でないと認めるとき

【参考裁判例】


『会館使用不許可事件』
① 上尾市福祉会館使用不許可事件(最高裁平成8年3月15日)
(事案)労働組合幹部の合同葬に使用するための使用許可申請に対して,上尾市福祉会館設置及び管理条例の「会館の管理上支障があると認められるとき」にあたるとしてされた不許可処分が違法とされた例
(判示)・本件施設は,地方自治法244条の公の施設に当たる
→ 正当な理由ない限り,その利用を拒んではならない(2項)
・ 条例6条は正当理由を具現化したもの
・(制限解釈)「会館の管理上支障があると認められるとき」との条例は,会館の管理上支障が生ずるとの事態が,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて,本件会館の使用を許可しないことができる
※ 泉佐野の最高裁判決が取ったような,合憲限定解釈を前提にした手法ではなく,憲法を出さずに制限解釈をしている
※ 泉佐野最高裁判決
市民会館の使用不許可が問題となった事案につき,使用不許可の根拠とされた条例の「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,本件会館で集会が開かれることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては,前記各大法廷判決の趣旨によれば,単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。そう解する限り,このような規制は,他の基本的人権に対する侵害を回避し,防止するために必要かつ合理的なものとして,憲法第21条に違反するものではなく,また,地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。

② 築城町公民館使用不許可事件(福岡地方裁判所平成元年11月30日)
(事案)町民が基地の日米共同訓練に反対する集会を企画し,一度許可を得た後に,【政治活動への使用を禁止した条例】で取消の違法性を争い,国賠請求をした事案で,15万円の慰謝料を認めた
(当事者)住民運動団体の代表個人
(制約理由)条例3条2号「特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教育,その他,政治的活動に利用するとき」
(主張)ア 憲法21条違反(表現・集会の自由,事前抑制禁止法理)で条例が違憲
イ 憲法26条違反(公民館は教育を受ける権利に基づいて設置されたものとして,町は積極的に提供する義務があり,制約できるのは管理に支障が出る明白な場合に限られる)
ウ 地方自治法244条2項違反(公民館は1項の「公の施設」であり,3項で不当な差別的取扱いを禁止)
エ 社会教育法22条7号違反(公民館施設を住民の集会その他公共的利用に供することが事業目的。事業目的違反となる)
オ 使用条例違反(自由裁量ではなく,羈束裁量。特定政党の政治活動でないのに十分な調査もなく当てはめた点が違法)
(反論)・ 右翼も同じ日に貸して欲しいと申請され,「管理運営上支障があるとき」に当たる
(判示)・(制限解釈)「公民館自体が『特定の政党の利害に関する事業を行い,又は公私の選挙に関し,特定の候補者を支持すること』を禁止することはその公共性・中立性から理由のあるところ,住民が公民館を使用して行う集会について,それを上回って単に政治的活動というだけで不許可にすることは全く合理性がない。右規定は,少なくとも社会教育法23条が定める公民館の運営方針程度に限定して解釈運用されるべきである」



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